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医療の知識「緩和ケア」について

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緩和ケアとは?

医療機関には様々な病気を持った患者さんが受診され、医療スタッフは現代医療の知識と技術を駆使して治癒を目指しています。しかし、残念ながらどんな治療にも拘らず、病気が進行して死亡される患者さんがいるのは事実です。また、人間の死亡率は100%と云われるようにすべての人に終末期が訪れるのも事実であります。

終末期には色々な苦痛や苦悩を伴います。今までの医療においては治癒を優先させるあまり、この患者さんの苦しみに充分耳を傾けなかった傾向がありました。わずかでも可能性があれば末期癌の患者さんに最後まで抗癌剤を投与し続け、心電図、血圧計のモニター器械や体内に留置された何本ものチューブに身体を拘束されながら、医師、看護婦、家族に励まされ続けるというような光景が医療現場ではよく見られました。しかも、患者さんには病名、治療経過が詳しく説明されず、おもに家族との話し合いによって大切な治療方針が決定されるということも多かったと思います。

このような状況では患者さんは疑心暗鬼のなかでしだいに孤独になり、見通しが分からないままひたすら苦痛を我慢することになります。

医療とは元々人に”癒し”を施すことであります。たとえ、不治の病気を持った患者さんに対してもなすべきことは沢山ある筈です。緩和ケアとは根治が不可能となった患者さんの身体的、精神的、社会的、霊的苦痛を和らげ、最期まで尊厳を持って生きられるように援助することです。

なによりも、今患者さんがどのような状態にあって、どのような悩みを抱えておられるのかということを医療者が理解し、共有することを大切にしています。そして、患者さんおよび家族と話し合いながら、限られた時間をいかに有意義に過ごせるかを一緒になって考えていきます。また、誰にも例外なく訪れる「死の過程」に敬意をはらい、死を早めることも遅らせることもしません。

病気の治療には普遍的でどんな患者さんにでも適用できる治療法があります。しかし、緩和ケアにおいては患者さんの人生観、家族関係、社会的背景がそれぞれ異なるため一定した方法がある訳ではなく、極めて個別的なケアが要求されます。

こう云いますと、生を諦めて安らかな死を迎えるためのケアと思われるかもしれませんが、決してそうではなくその人らしい生き方を最期まで支えるため医療であります。
とはいえ、もう二度と健康を取り戻すことができないことが分かっている患者さんにどこまで援助できるのか、大きく困難な課題があります。

ホスピス・緩和ケアの歩み

ホスピスという言葉は、中世ヨーロッパの十字軍時代に巡礼や旅行者、病人たちを休ませるために修道院が提供した宿泊施設を指します。.近代的なホスピスは1967年シシリー・ソンダース博士がイギリスに創設したセント・クリストファーホスピスに始まるといわれています。ここでは、治る可能性がない末期がん患者に癒しを与えるため、がんに伴う諸症状を和らげる方法について研究されました。

これがホスピス運動として一般に知られるようになり、各国へ拡がって行きました。末期がん患者に対する全人的ケアを提供し、症状を緩和して、その人らしい生き方を最期まで支えることを目指していることから、近年では「緩和ケア」ともいわれるようになりました。この基本理念はキリスト教がバックボーンとなってはいますが、宗教的な差別や強制はまったくありません。

日本においては1970年頃よりホスピス運動が移入され、1981年に聖隷三方原病院に初めてのホスピスが誕生しました。その後、1990年には旧厚生省が一定の条件を備えた緩和ケア病棟に対して定額の緩和ケア病棟入院料を支給するようになりました。この制度によって緩和ケア病棟の運営がしやすくなり、最近急速に増えています。

2004年8月現在、全国に135施設(2552床)となっています。年間のがんによる死亡者は約31万人いますが、そのうち緩和ケア病棟で亡くなる患者は4%に過ぎません。もちろん、すべてのがん死亡患者が緩和ケア病棟で亡くなることが望ましいわけではありませんが、まだまだ充分な緩和ケアを受けられないまま亡くなっている患者が多いと思われます。

イギリスやオーストラリアでは医学部講座に「緩和医療学」が設けられ、独立した学問領域として認められている大学もあります。日本では、まだそのような大学はありませんが、がん終末期の病態、疼痛緩和の技術、諸症状のコントロール、精神的問題などの研究が進み、1996年に第1回日本緩和医療学会が開かれました。医師のみでなく、看護師、薬剤師、理学療法士、臨床心理士など様々な医療の専門家が集まって、緩和医療の技術、知識や心を学び会っています。

すべての人にやがては訪れる最期の時を、いかに尊厳をもったまま迎えることができるかは、とても大きく困難な課題です。
今後、緩和ケアの考えがますます拡がり、根付いていくことが望まれています。

病名告知について

現在では、がんは必ずしも不治の病ではなくなりましたがそれでも、日本人の死亡原因の第一位はがんであり、毎年のがん死亡は約31万人で、これは四人に一人ががんで亡くなっている計算になります。誰でも健康な時は、まさか自分ががんに罹るなどとは思ってもおられないでしょう。しかし、ちょっと体調を崩してそれが長びいたり、身内や親しい人ががんになったと聞くと「もしかして自分も・・」などと、とたんに不安になってくるものです。そして、病院を受診して診察を受けた後、精密検査や入院を勧められるとますます不安になってくるでしょう。

精密検査が終わっていよいよ説明を受ける時、どのように思うでしょうか。「悪いものであればあまり聴きたくない」とか「はっきりとは聴きたくないがそれとなく言ってほしい」とか「治るのであれば聴きたい」とか「すべてを正確に知っておきたい」とか人それぞれでしょう。この病名告知に対する考えは、その人の人生観に基づくものですから一概に論ずることはできませんが、近年は告知を希望する声が急速に高まっています。

30年前までは不治の病の告知はしないのが普通でした。20年前から一部の先駆的な医師たちが告知を試みるようになり、10年前からはケースバイケースで告知するようになりました。そして、最近では「告げるべきか否か」から「どのように、どこまで告げるのか」、さらに「告げた後にどのように援助していくのか」が議論されるようになりました。

以前(2001年)に患者さんと家族に告知に関するアンケート調査をしたことがあります。その結果、
「あなたの病気がたとえ治りにくい病気でも、本当の病名をお知りになりたいですか」という質問に74%の患者さんが「はい」と回答されていました。また、家族へのアンケートでは「患者さんに本当の病名を知らせた方がよい」と回答された家族は56%で、「知らせたくない」と回答した家族は26%でした。患者さん、家族ともに予想よりも告知に対して積極的な態度がみられました。

しかし、進行がんで完治が望めない患者さんの場合には、つらい事実を伝えることはとても困難なことで、患者さんが本当に理解され、受け止めることができるように援助することは医療の専門家としての大切な責務と心得ております。

がん疼痛について

近年、がん医療は長足の進歩を遂げています。しかし、年間40万人ががんの診断をうけ、そのうち約22%が診断時に既に遠隔転移を伴っており完治が困難な状態です。そして、昭和56年からはずっとがんが死亡原因の第一位になっています。

がんにはよく痛みを伴うといわれますが、痛みの出現する割合がんの発生部位、病期、転移の有無などにより異なります。進行したがんではおおよそ60〜70%、末期がんでは75%の患者さんになんらかの痛みが出現するといわれています。しかし、痛みのすべてががんに起因するわけではありません。だいたい、7割ががん自体による痛みで内臓、骨、神経などに浸潤あるいは転移した場合です。残りの3割のいたみの原因は手術、抗がん剤、放射線療法などの治療に関連したものや便秘、床ずれによるものです。

「痛みは人を現在に閉じ込める」といわれます。痛みに捕らわれているときは、過去を振り返ることも未来を想像することもできず、ひたすら耐えることを強いられてしまい、どんなに社会的地位があり立派な人でも打ちのめされてしまいます。少しでも早くとって貰いたい症状です。

このがん疼痛の治療について世界保健機構(WHO)は1986年に「がんの痛みからの解放(第1版)」を発表しました。これはWHO方式とよばれ、今まで28カ国語に翻訳され、世界で50万部以上が出版されました。この治療法は鎮痛薬を内服で、頓用ではなく時間を決めて規則正しく、効力におうじて段階的に使用することを推奨しています。そして、なによりもモルヒネが「なるべく使わないほうがよい危険な薬」とされていたものを「がんの痛みに積極的に使用すべき有効で安全な薬」と位置づけたことが重要でした。

この治療法を広め、20世紀末までにすべてのがん患者を痛みから解放することを目標に掲げて、がん疼痛治療に取り組んできました。また、がんの治癒をめざした治療とがんによる諸症状に対する治療(緩和的医療)は分離されるものではなく、がんの診断時から同時におこなわれるべきものとする
緩和ケアの考え方を提唱してきました。

しかしながら、10年後の1996年に本邦でがん患者のQOLに関する研究班が行った調査では、末期状態の患者さんで除痛率は60%未満という結果でした。なぜ、このように除痛率が低いのかは、いろいろ考えられますが、一番は一般の人々も含めて医療従事者もいまだにモルヒネに対する誤解や偏見があることがあげられます。

モルヒネはがん疼痛に正しく使用すれば決して寿命を縮めたり、中毒になることはありません。実際に、8年間モルヒネを内服して疼痛をコントロールしながら普通に日常生活を過ごされている患者さんの報告もあります。2000年に日本緩和医療学会は「がん疼痛治療ガイドラインを発表し、科学的根拠に基づいた疼痛治療法を推奨しています。

今後、ますます緩和医療が普及し、治癒が不可能になった患者さんが痛みから完全に開放され、最期までその人らしく生き抜いていけるようになることが望まれます。

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