皮膚病変
「リウマチ」の長い患者さんは真皮層が萎縮して、皮膚が透けるように薄くなって傷つきやすくなります。ちょっと圧迫しただけで皮膚剥離したり、皮下出血がおきることがあります。また、肘、後頭部、仙骨(臀部)などの圧迫を受けやすい場所にはリウマチ結節ができることがあります。
「リウマチ」の活動性が治まってくれば、結節も小さくなります。皮膚の血管炎を合併すると皮膚潰瘍を起こしてなかなか治らないことがあります。このような場合は「悪性関節リウマチ」に移行していることがあり、厚生労働省の認定する特定疾患となります。
しかし、この「悪性」という言葉が癌などの悪性疾患と紛らわしく、患者さんに不安感を与えることから最近病名の見直しが検討されています。
眼病変
- もっとも多いのはシェーグレン症候群の合併です。
- 涙液が減少してドライアイの症状が出てきます。
- 同時に唾液も少なくなって口の渇きがでます。
- ひどい場合には会話が続けられなくなってしまうことがあります。
近年、唾液腺を刺激して唾液分泌を促進させる薬が使われるようなりました。5割ちょっとの患者さんに有効のようです。
呼吸器病変
「胸膜炎」をおこして胸水が貯まることがあります。しかし、ほとんどは無症状で大量に貯まって呼吸困難がでるようなことはまれです。呼吸器病変でよく問題になるのは「間質性肺炎」です。
肺の下の方からゆっくりと線維化していくもので、比較的男性の患者さんに多いといわれています。
進行は緩やかなことが多く、全部の肺が激しく障害されることは少ないため、あまり症状がでることはありません。ひどい場合には肺活量が低下して息切れがしたり、空咳がでたりしますが、治療の適応になることは少ないです。
問題は同じような「間質性肺炎」が薬の副作用として起きることです。この場合は急速に進行することがあり、「呼吸困難」が出現して入院治療が必要なことがあります。
薬のなかでも比較的頻度が多く、発見が遅れると重症化しやすいのは「リウマトレックス」です。その他「リマチル」、「注射金剤」、まれに「アザルフィジン」でもあります。しかし、発生頻度は「リウマトレックス」でも1000人に1~2人ですので、そんなに多くはありません。
消化管病変
消化管の合併症は比較的多くみられますが、「リウマチ」自体によるものではなく、ほとんどが「鎮痛剤(非ステロイド系抗炎症剤)」の副作用か「アミロイドーシス」の合併によるものです。
数年前に日本リウマチ財団が非ステロイド系抗炎症剤を服用しているリウマチ患者さんの調査をしました。その結果、15.5%に胃潰瘍がみられ、しかもその4割以上が腹痛を伴っていなかったということでした。
予想よりも副作用が多くて医療者は驚かされましたが、その後抗潰瘍剤の進歩や副作用の少ない「非ステロイド系抗炎症剤」が開発されおり胃潰瘍合併率は減少してきています。また、「リウマチ」の長い患者さんのなかでは、「アミロイド」というタンパク質が胃や腸に沈着してくることがあります。これは「アミロイドーシス」といわれ、慢性の下痢、吸収不良をきたして、やっかいな合併症です。
腎障害
これも「リウマチ」自体によるものはほとんどありません。消化管と同じように薬の副作用か「アミロイドーシス」によるものです。薬剤性の場合は「リマチル」、「D-ペニシラミン」、「金製剤」、「カルフェニール」などが代表的です。
最初に蛋白尿がでることが多いので、定期的に尿検査を受けていれば早期に発見できます。薬を減量、中止すればたいてい数ヶ月で軽快します。
「二次性腎アミロイドーシス」はやがて「腎不全」に進行して、「尿毒症」になることがあり、人工透析を要することがあります。これは長期に渡って強い炎症が持続した場合であって、最大の予防策は原病をコントロールすることです。
以上、様々な合併症がみられますが、「関節リウマチ」自体による合併症はなんといっても「リウマチ」をよくすることです。そのためにはやはり、「薬物療法」が中心になります。そして、薬物によっても合併症がでることがあり諸刃の剣とえます。しかし、定期的な診察と検査により早期発見が可能ですから、いたずらに副作用ばかりを恐れないで主治医と信頼関係を築き、前向きな姿勢で療養されることが大切と思います。